『内外タイムス』
(2000年01月13日付)
噂の“深層”<19>
■『噂の真相』編集長 岡留安則■
リストラ筆頭公安調査庁の“策謀”
上祐凱旋報道と権力の片棒担ぎ

内外タイムス0113

暮れから新年にかけてマスコミはオウム真理教の上祐史浩の出所で過熱報道を繰り広げたようである。広島刑務所から出所した後、上京して横浜支部にひとまず落ち着くまで、一部マスコミはヘリコプターまで飛ばしたという。幸い、筆者はこの間、日本にいなかったので怒りやイライラで年末年始の休暇中の気分を害されずにすんだが、それにしても2000年に突入したというのにマスコミの相も変わらぬ旧態依然とした体質にはウンザリである。
 マスコミの過熱報道の先例をつくったロス疑惑事件の三浦和義被告の出所だってこれほどのバ力騒ぎにはならなかった。刑期を終えた人物の出所としては、大物ヤクザや政治家以上の前代未聞の“凱旋報道”。確かに上祐氏が三浦和義氏のマスコミ向けパフォーマンスに負けず劣らずのタレント性を発揮してみせた人物であることは否定しない。
 しかし、上祐氏が何ほどのものか。いまや麻原彰晃教祖以下大物幹部が軒なみ逮捕され、組織的には、壊滅状況にあるオウムの元正大師だった幹部が復帰しただけの話。罪名にしても「有印私文書偽造」と「偽証」の軽犯罪のタグイでしかない。ヤクザでいえばハレンチ罪の位置付けで出所した人物として、格もかなり低いレベルの扱いにすぎない。
 それでも昨年秋ごろから「上祐12月19日出所」がマスコミの間で喧伝され大物扱いされてきたのは、オウム新法を手に入れた公安調査庁の同法適用に向けた世論づくりの一環なのである。各地の住民トラブルの背後にも公安庁の根回しがあり、「オウムは危険」というマスコミキャンペーンが意図的につくられてきたことは周知の事実。 世はリストラばやり。巨額の財政赤字をかかえる国としては自ら率先して官庁のリストラ化をはからなければならないはず。その有力ナンバーワン候補が公安庁だった。組織存亡の危機に立たされ、破防法という伝家の宝刀が棄却されてからの公安庁は生き残りをかけてオウム犯罪集団のイメージづくりに躍起となり、土檀場でドサクサまぎれのオウム新法の入手に成功したのである。公安庁にとってはオウムはいまだ危険な凶悪集団であり、上祐はその凶悪集団の復活をもくろむ首謀者でなければならないのである。
 しかし、現在のオウムは解散声明を出しても偽装にすぎないと決めつけられ、憲法違反の住民票受け付け拒否もされ、住居すらもままならない。まるで棄民のごとし、である。警察・マスコミ、そして住民が一体化したオウムいじめはまさに現代版魔女狩りである。教祖も幹部も獄中にあり、いまや組織の体すらなしていないオウムに唯一危険性があるとすれば、追いつめられたあげくの自暴自棄的なテロ行為である。
 まさに北朝鮮の金正日体制と一緒で、パッシングや封じ込めだけでは宗教も思想も反作用を強めるだけである。
 いま必要なことはオウムに集う連中の市民社会との共生や信者たちのメンタルケアの充実なのではないか。オウムウオッチャーもオウムバッシッングのマスコミも、組織存亡のためには手段を選ばない権力の片榛担ぎでは何ひとつ解決しないことを、2000年を機にそろそろ気がついたらどうか。