『本の雑誌』 |
私はスキャソダル雑誌の編集者だ。 ある時は政治家の献金パ−ティに潜入し、ある時は芸能人や作家の密会現場を張り込む。出版社・新聞社からの内部告発があればすぐに取材に走り、怪しい人物からのコンタクトには隠しマイクをつけて現場に向かう……。 ネタやスク−プがあるところだったら、どこにでも飛んで行く、それが私のお仕事だ。 そして今日も一日、スキャンダルを探す。 某日、かねてよりお世話になっている某ジャーナリスト氏に誘われて日本料理屋へ。ここは某政治家の“愛人”が経営していると『噂の真相』でスッ破ぬいた店だ。この某ジャ−ナリスト氏はこの店の常連で、「一度挨拶しといた方がいいよ」といわれて訪店。「(記事を書く前ならいざしらず)掲載後に挨拶してもなあ」と思いつつも、“フグが食べられる”ことにつられて行ってしまう。もちろん、女将には不機嫌な顔をされ、キツ−く怒られた。まあこれも仕事のうち(?)。とはいえフグは美味で、次号用のビッグネタも仕入れて気分はハッピ−!! ネタさえゲットすれば気分は爽決、これがスキャンダル編集者の哀しいサガなのだ。 某日、ある文学賞の受賞パーティに潜入取材をする。別に招待されているわけではないので、知り合いの編集者にお願いして、さりげなく潜入する(一緒に連れていってもらう)のだ。パーティは盛況で有名人もたくさんいたので、嬉しくなって写真をとりまくる。途中、ふと冷たい視線を感じて、ファインダ−越しに見ると、そこには知り合いの評論家氏がいた。その目は「なんでおまえがここにいるんだ、よくやるよまったく」と私には見えた。フフフ、どこにだって入っちゃうんだよ−、と一人ほくそ笑む。 他にも知り合いの顔がちらほら見えるが、自分からは決して挨拶をしないのが仁義(!?)。私と親しそうにしているだけで「あいつは『噂の真相』にネタを流しているんだ」疑われかねないからだ。それが現在のマスコミ体質でもある。こうしたギョ−カイ人ウジャウジャの場所では、みんな「『噂の真相』なんて知らないよ−」という態度をするのは暗黙の了解で“大人の判断”というもの。でも個人的に会うとみんなネタをくれる!ホントはいい人ばかりなのだ。 某日、とはいっても、毎日ネタ探しばかりしているワケにはいかない。なにしろ私は「刑事被告人」、そう世に言う“ハンザイシャ”予備軍なのだ。今から遡ること4年、わが『噂の真相』は東京地検特捜部によって雑誌界初の名誉毀損罪で起訴された。もちろん私が取材し、書いた記事(作家の和久峻三と西川りゅうじんの二本)で……。でもって、編集長とし“共謀”したことにされて被告人となったわけだ。東京地検特捜部といえば、ロッキードの田中角栄やら、リクル−トの江副(元)会長やらの多くのそうそうたるメンバーを起訴したことで知られる日本の最強捜査機関(といわれている)。そんなところが、なぜ私ごときを? と思われるかもしれないが、どうも『噂の真相』がマスコミタブ−だった特捜部の批判を次々と書きまくるので、頭に来て腹いせにやった(起訴した)らしい。まあ、権力なんてそんなもの、スキャンダル雑誌の編集者としては大変名誉なことである。そしてこの日は東京地裁での公判が開かれた。出廷証人は和久の元秘書だ。この秘書はかなり長期間和久の元で働き、「君は作家になれる素養がある」といわれて和久のゴ−ストライタ−までしていた人物なのだ。この秘書により和久のトンデモ“創作術”と“素顔”が法廷で次々と明らかになった。“無罪”を勝ち取る日は近い!と弁護団ともども確信する。 某日、今日は、知り合いのコラムニストと“ネタ収拾”を兼ねて都内某所で酒を飲む。最近盛り上がりを見せている宗教ネタで議論が白熱してしまうが、ふと見ると、ちょっと離れたテ−ブルに某有名人(男)と、某有名人(女)が何やら親しそうにお食事をしているではないか。早速話を中断し、密かに耳を傾けるが席が遠いためよく聞き取れない。席を移動しようにも空いてる席がないので、仕方なく見守っていたら突然編集者と思しき人物数人が現れ、“密会”ではなく何かの打ち合せだったことが判明。そのまま二人を尾行しようと意気込んでいただけにガッカリしてガンガン飲みまくってしまう。 某日、『噂の真相』では新たなプロジェクトとしてホ−ムページ作りの作業を行っていたのだが、半年以上の準備期間をへてめでたくスタートした。半年以上もかかったのは・『噂の真相』の20年分のバックナンバーを有料課金しようという、壮大な計画だったためだ。合計2000本近くの記事をホームページ上に載せるのだからクラクラするような作業だった。元はといえば、編集長の「ホームページを作るぞ!」という鶴の一声から始まったものだが、編集長は未だワープロも打てない、ビデオの予約録画もできないという機械音痴人間。にもかかわらず、“新し物好き”ときている。そのため編集長の打ち出す(夢の)プランと実際の作業のギャップのデカイことデカイこと。現在、ホームページは開設されたものの、編集長の“夢のプラン”は続いており、次は動く映像と音声を導入するという野望に向け、私たちは作業に追われる毎日なのだ、トホホホ。 某日、今日は楽しい接待、またまたフグのフルコースなのだ! 接待のお相手は『噂の真相』で連載中の漫画家高橋春男氏。飲めや歌えの狂乱の宴と相成った。意外かもしれないが、『噂の真相』は編集長以下、妙に明るい人間が揃っており、カラオケともなるとウケ狙いの「君が代」まで熱唱する人物(副編集長なのだが)までいる。だが、しかし『噂の真相』は反権力雑誌であることを忘れてはいけない。最近も警察・検察もののスクープを連発したため、逆恨みした警察幹部から「編集長を逮捕しろ」との命令が下ったとの情報が頻繁に入り、編集長以下関係スタッフが雲隠れすることも珍しくない。やくざや右翼が抗議にきたり、書かれた人聞が殴り込みに来たこともある。そのため編集部のドアはオ−トロックにして外からは開かないようにしてあり、編集部内にはイザという時のために監視カメラまで設置してある、という恐ろしい編集部だ(ちなみに引っ越す以前の編集部には防弾ガラスまでも完備していた)。にもかかわらず、編集長は脳天気だし(誰かに“ノ−天気ゲリラ”と、命名されたこともあった)、スタッフはみんなあっけらかんとスキャングを追っかけていて、平均年齢も雑誌のイメージよりかなり若い。だが、これでいいのだそうだ。そう、わが『噂の真相』のモットーは、「明るく、元気にスキャンダルを楽しもう!」なのだから。 |