『内外タイムス』
(1999年10月22日付)
「噂の“深層”」<14>
■本誌編集長・岡留安則■

マスコミ  一般人にはなんの関係もないここだが、この15日から新聞週間なるものがスタートした。これにひっかけて日本新聞協会では新聞大会を開催し、報道倫理の向上など型通りの決議を採択したという。
 ところが、その2日後の朝刊各紙はほぼ1面トップで久々の大誤報をやってみせた。参考までに各紙のタイトルを列挙しておこう。誤報はキルギス日本人鉱山技師4人拉致事件に関するものだ。いずれも10月17日付朝刊。
・朝日 日本人4人解放
・読売 日本人含め全員解放
・毎日 日本人3人解放
・産経 日本人の人質解放
・東京 キルギス4邦人解放
 いずれも1面トップと社会面トップ扱い記事のセット。日経のみは1面扱いながら「人質4邦人を解放」と小さな扱い。日経は社会面トップで扱っているが、事実の確認が取れていないことをにおわせており、海外企業にネットワークを持つ強みといくばくかの〃良識〃の表れを読みとれる。
 各紙の情報源は「キルギス政府筋」ヒなっており、東京は「国営カバル通信」、産経は「キルギスのマメイトフ国家保安省次官」とより具体的に記述している。
 しかし、これが真っ赤なうえだったことが後に判明するのだから、もはや笑う気力すらおきない。少しだけ笑えたのが、正義と真実の「赤旗」までが「日本人人質3人を解放」とやっていたことだ。「赤旗」の外信記事は時事通信にオンブにダッコ状態なので気の毒な面もあるが、「赤旗」の責任が免罪されるわけではあるまい。
 それにしても何でこんなことが起こるのか。久々の誤報と書いたが、実は約4カ月前の6月10日にも各紙一斉の誤報記事が掲載されたばかり。「長銀一斉強制捜査」の記事である。これも周知の通りうそだった。新聞の前打ち記事を嫌った東京地検がわさとタイミングをズラしたとの裏話もあったが、誤報は誤報である。
 はっきりいえば、日本の新聞が各紙横ならび精神に貫かれており、その内容も悪名高き記者クラブ制に代表される「発表もの」記事に頼っているためだ。各紙が独自の情報網と取材作業を日常的に行っていれば、こんな大本営なみの大誤報がおこる方が不思議なはずである。紙面の大半を発表ものに頼る新聞ならば各紙読み比べても大した違いもなく、紙の無駄というものである。
 花田紀凱編集長率いる「メンズウォーカー」はこの新聞週間にひっかけて「新聞なんていらない!」という特集を組んでいたが、まったく同感である。この特集の中で筆者は、今の新聞から再販制と宅配制を取っぱらったら、1000万部を豪語する読売新聞だって100万部以下に落ちるだろうと指摘した。1000万部を支えているのは習慣性と洗剤やビール券の拡材にすぎないからだ。その証拠に、これだけの大誤報をやっても何の社会的影響も反省もないのだから、ミジメすぎるではないか。当の新聞もそれは分かっているらしい。新聞大会では「新聞存立の根幹である再販・戸別配達制を堅持していく」という決議も採択されたという。嗚呼!